孫子なら 従業員に対して「経営者目線を持て」という社長に こう答えるだろうという話 ~孫子のことば

『孫子』の書き出しは、「兵とは国の大事なり」です。

おおよその意味としては「戦争は国家の重大事で、存亡にも深く関わることを心得て計画を立てる必要がある」
孫子曰わく、兵とは国の大事なり、生死の地、存亡の道、察せざるべからざるなり。
今風に言えば、

重要なプロジェクトをするなら
事前によーく計画しようね」ということです。

今回ささったのは、その「大事」の続きにある「五事」。

ぜひ、一緒に考えてみませんか?



「五事」は4W1h

さきほどの文の続きにはこう書いてあります。

「戦争は五つの事に則って進むので、双方をこの基準で比べて形勢を知る。
一に道、ニに天、三に地、四に将、五に法である」
故にこれを経るに五事を以てし、これを校ぶるに計を以てして、其の情を索む。
一に曰わく道、 ニに曰わく天、 三に曰わく地、 四に曰わく将、 五に曰わく法なり。
これまでこの「道・天・地・将・法」の5つを見て、並列の箇条書きだと思っていたんです。

ただ、ふとこの順序には深い意味があることに気づいたんです。

きっとたぶんすでに指摘されていることでしょうけど、自分できづいたの嬉しい( *´艸`)

「五事」を簡単にまとめると、
  • 道…なぜ?(Why, 大義・目的)
  • 天…いつ?(When, タイミング)
  • 地…どこで?(Where, 場所)
  • 将…だれが?(Who, 人事)
  • 法…どのように?(How, 戦術)
今回「何を(What)」は、戦争をテーマにしているので、みごとに5W1Hに気を配っていることがわかります。

ノウハウの優先順位は最後

兵法、つまり「戦争のやり方」と言えば、最後の「法(戦術)」に目が向かいます。

現代でも経営改善を考えるときには、「やり方」に目が行きがちです。

どうしても「必勝の作戦」や「すごいノウハウ」を教えてほしいと考えるものです。

あるいは、経営不振の原因を、「誰それが悪い」というように「将」のせいにしたり、「立地が悪い」とか、「今の経済情勢が悪い」、というように「天地」のせいにします。

うん、ありがち。

ひごろの行いが結果に

きっと、孫子に意見を求めた呉王も、そうだったんでしょう。

ところが、その返答の第一が「道」。

「道」とは何なんでしょう。
道とは、民をして上と意を同じくせしむる者なり。故にこれと死すべくこれと生くべくして、詭わざるなり。
道とは、君主と人々の心が同じくなるような普段の行いである。そうすれば戦争の時でも、人々は命運を共にして一生懸命に動く(※詭(うたが)う…詭弁の詭)。

孫子は「道」の評価基準として、「どちらの君主が人の心を掴んでいるか。どちらにおいて法令が正しく行われているか。どちらにおいて賞罰が公正に行われているか」を挙げています。

人気取りをする必要もない

ここで、この「人の心をつかむ」というのが、「プロジェクト(戦争)そのものへ」ではなく、「ふだんの運営(政治)へ」であることも見逃せません。

というのも、重要なプロジェクトというのは「万人に支持される」とは限りませんから。

むしろ、変に人々に気を使ったようなプロジェクトでは、かえって失敗することも多いです。

だからこそ、日ごろの運営実績が問われるわけです。

経営者目線とは

売上不振のお店をみると、社長さんは「従業員に経営者目線になってほしい」とか、「従業員が目的志向になっていない」と言っていることが結構あります。

経営者と従業員が「同じ心」で、なのでしょうか。

そのためにプロジェクトの「目的」をしっかり説明する、ということになります。

ほとんど押し付けのように。



これはありがちな間違いで、すればするほど人の気持ちは離れていきます。

理由はもうお分かりですよね。

つまり、この「道」がうまくいっていないんですよね。

人と人が同じ心になるの必要なのは、耳障りのよい言葉ではなく、常日頃の行動なのです。

もしかすると、はじめは孫子も こんな状況から経営コンサルティングをしていったのかな、なんて思って 身近に感じました。

ちなみに 漢文の原文はこちら。

孫子曰、兵者國之大事、死生之地、存亡之道、不可不察也、
故經之以五事、校之以計、而索其情、
一曰道、二曰天、三曰地、四曰將、五曰法、
道者令民與上同意也、故可以與之死、可以與之生、而不畏詭、
天者陰陽寒暑時制也、地者遠近險易廣狹死生也、
將者智信仁勇嚴也、法者曲制官道主用也、
凡此五者、將莫不聞、知之者勝、不知者不勝、
故校之以計、而索其情、
曰主孰有道、將孰有能、天地孰得、法令孰行、兵衆孰強、士卒孰練、賞罰孰明、
吾以此知勝負矣、
http://sloughad.la.coocan.jp/novel/master/achaina/sonshi/sonsh011.htm

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