島田紳助さんの書いた『ご飯を大盛りにするおばちゃんの店は必ず繁盛する~絶対に失敗しないビジネス経営哲学』(2007, 幻冬舎)という本を読んでいます。
その中に「タレントの店はなぜつぶれるのか」という章があり、考えさせられることがありました。
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この本を読むまでは、タレントの店という風に聞くと、「話題作りで飽きたらすぐに辞める」という印象を持っていました。
「話題作り」という印象ってないですか?
なぜそういう印象が生まれるのか考えてみました。
どうも、自分の中には「タレントが本業で、店は副業」という意識があるように思います。
副業なので力の入れ方が中途半端になり、成功しにくい、と無意識に感じていたんだと思います。
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島田紳助さんはこの本でタレントの店が潰れやすい理由を二つ説明しています。
一つはタレントの店は宣伝があだになる、ということです。
経営の視点から「宣伝は諸刃の剣」といえるのは、すごい着眼点です。
タレントの店は、一般の店に比べて目立つので広告宣伝がしやすいのはメリットではあるんですけれども、お客さんの期待感も高くなる傾向があります。
その期待を超える満足感を与えることができなければ、がっかりさせることになってしまうからです。
そのため、どうしても「一回行けば十分」というポジションに陥りやすいです。
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もう一つはタレントへの色眼鏡です。
タレントの店と若手のシェフの店を並べてみると、値段などの条件が一緒ならば、通常シェフの店の方が品質が高いように感じてしまいます。
これはなぜでしょう。
一番の要因は本気度です。
逃げ道がある人には、なかなか人はついてこないのかもしれません。
また、タレントってギャラが高そうなので、なんとなく材料や技術までお金がまわっていなそうに感じてしまいますよね。
無名のお店に比べてクオリティと関係ない経費が多いのではないかと勘ぐられてしまうのです。
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実はこの二つの理由は、両方ともお店における広告宣伝と品質のバランスについて考えさせられます。
売上を上げるためには、お店のリソースを広告宣伝と品質向上の二つの方向に使うことができます。
品質向上にだけ力を入れても世間に知れ渡らなければ来客は増えません。
もちろん、地道にリピーターが増えるかもしれませんか、売上が上がるまでには時間がかかります。
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一方の広告宣伝に力を入れると一時的には来客が増えますが、期待を超えるサービスでないとそれは一過性のものになってしまいます。
従ってお店を運営していくには、広告宣伝と品質向上のバランスに常に注意を払っていく必要があります。
どの程度広告に力を入れるべきかは、そのお店の受け入れできる客数から決まります。
受け入れられることのできる最大数の客に、品質の高いサービスを提供することが一番の王道です。
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店舗経営をしていると、売上を上げようと思うと数字で管理しやすい広告宣伝にどうしても注目してしまいます。
「宣伝を10倍にしたら売上も10倍になる」かのように錯覚してしまうのです。
特に、現代は「目立ったもん勝ち」のように誇大広告が氾濫しているので、なおさら宣伝には力を注がないといけないように見えます。
しかし、むしろ提供しているサービスの質や客のニーズを的確に掴んでいくことが大切だと改めて感じました。
具体的な話から経営哲学に繋がる本でとても面白いと思います。