無伴奏と自由 ~ バッハの無伴奏チェロ組曲

バッハの無伴奏チェロ組曲の一曲目にあるのが、このト長調のプレリュード(前奏曲)です。


制約と探究

時に芸術家は「その本質とは何か」を探求するために、最小限の作品に作ろうとします。

チェロ独奏という「制約」のある形式は、バッハにとってそういった探求の軌跡なのかもしれません。

この無伴奏チェロ組曲は、今でこそ「チェロの聖典」とまでいわれますが、1720年代に作曲されてから1900年代までの約200年間、ほとんど「埋もれて」いた曲でもあります。

カザルスの自由

それまで「練習曲」程度に扱われていたこの曲を「再発見」し、広く世界に知らしめたのはパブロ・カザルス(1876~1973)。

スペインのカタルーニャ地方で生まれたチェロ奏者です。

残された彼の演奏を聴くと、自由自在に躍動する力強さと、深い歌心を感じます。

彼の自由を愛する心は、それまでの脇を閉める「窮屈な」チェロの奏法を大きく変え、チェロという楽器の表現力そのものを広げました。

一方で、彼は内戦に苦しむ故郷スペインの自由を思い、反ファシズムの立場で独裁政権への抗議を貫きました。

カザルスの日課

カザルスは13歳の時にバルセロナの楽譜店で出会って以来、 毎日この無伴奏チェロ組曲から弾き始めるのが日課だったそうです。

この曲は、カザルスにとっても「自分とは何か」を探求する音楽でした。