応援したくなる人 ~『代表的日本人』

今日は内村鑑三の『代表的日本人』を読みました。





応援したくなる人 

この本は、以前にある企業の経営者の方が「社員にもし一冊本を勧めるとしたら」と講演で言っておられたもので、ずっと気になっていたものです。

その一節にこんな文章がありました。

「天」には真心をこめて接しなければならず、さもなければ、その道について知ることはできません。

西郷には人間の知恵を嫌い、すべての知恵は、人の心と志の誠によって得られるとみました。

心が清く志が高ければ、たとえ議場でも戦場でも、必要に応じて道は手近に得られるのです。

常に策動をはかるものは、危機が迫るとき無策です。

「人間の知恵」と「天の知恵」。

確かに順調のときにうまくいく人と、逆境のときにうまくいく人には違いがあるように思います。



「人間の知恵」の賢い人は、一気に大成功をおさめます。

思いもしないような斬新なアイデアで、周囲の人をあっといわせるような大成功を。

しかし、そのような人にはなんか「危うさ」を感じたり、あるいはもっと素直に言えば「うらやましい」と感じます。

それはきっと私だけでなく、多くの人が自然ともつ感情なのでしょう。


だから、そういう人が順調な時は持て囃されるものの、逆境になれば見向きもされない。

いえ、それどころか「それみたことか」と叩かれてしまう始末です。

周りの人はこのような人を見ると、成功している間に「違和感」をもち、失敗した段になってようやく「安定」します。

これでは、人生の何十年を過ごすことはなかなかできません。



一方、「必要に応じて」人から助けの手が差し伸べられる人がいます。

そう、「応援したくなる人」です。

あなたは、どんな人を応援したくなりますか?

どんな人を応援していますか?



きっとその人の中にある魅力は、「志の誠」なんではないでしょうか?

「志」とは「ある方向を目ざす気持ち。心に思い決めた目的や目標(goo辞書より)」です。

自分が応援したくなる人も、何かを目標に向けてひたむき行動している人です。

もちろん、その目標が「自分のため」でも、「家族のため」でも構いません。

でも、一番心動かされるのは「あるべき状態のため」という目的ではないでしょうか。



このように書くと、今の時代では「ブランディング」のために、「もっともらしい目的を掲げる」みたいなことに嵌ってしまいそうです。

う~む。

すぐに「見た目」を飾る発想になってしまう自分がイヤになります。

時代のスピード 

それはそうと、久々に岩波文庫の本を読んでみて感じたのが、「文章の密度が濃いな」ということです。

鈴木範久氏の訳は1995年なのでそこまで古くはありませんが、英語原文は1894年(明治27年)の執筆です。

当時は活版印刷です。

きっと今より文字も紙も「高価」だったんでしょう。

しかし、文庫サイズのわずか4ページの間に、明治維新にいたる東西の文明の歴史を俯瞰して叙述する文章には驚きました。



思えば、明治時代に比べて現代は、文字を読むスピードがものすごく速いのかもしれません。

そのスピード感で、当時の文章を読むと頭に入らない。

書いてあることが何を指しているのか、ゆっくり考えながら読み進める必要がありました。

だから、難しく感じてしまう。



そうならないようにするために、今わたしたちが接する文章は、改行やスペースが多く「読みやすく」なっています。

ブログだけでなく、書籍でもその傾向はありますよね。

すっと眼を動かして、さっとページをめくり、すすっとスクロールしないと、「読んだ」気にならない。

「読めた」気にならない。



おそらく漫画のスピード感なのかなと思うんですが、これって不思議ですよね。

だからといって「昔がよい」とか「今はよくない」とかいうつもりはありません。

「電子の文字(使いたかった♪)」という今の媒体に合った表現形態だからです。

とはいえ「スピード感の違い」に気づいて、ちょっとびっくりしました。

影響力のある人 

どうも、文章にしても、人にしても、ものすごいスピードで評価して捌いていく、という習慣を身に付けているようです。

もはや習性といってもよいかもしれません。

一日の間にたくさんの文章を目にし、たくさんの人と出会うからです。



ニュースサイトを見たり、SNSを見たり、ネットで調べものをしたり、ブログを読んだり。

一日のうちにたくさんの人のたくさんの文章に出会います。

それでも、日々生まれる文章のほんの一部にすぎません。



「特別な人」でなくても文章を発表できるようになり、世界は広がりました。

いろんな「ふつうの人」の「ふつうの考え」を交換できるようになりました。

この文章もそんな「ふつうの文章」のひとつです。



でも、そんな「ふつうの人」の中から自然と「特別な人」が生まれてくる。

それが現代の「インフルエンサー」なのかもしれません。

ferretのWebマーケティング用語辞典によると、

「インフルエンサー(Influencer)」とは、影響・効果・勢力の意味で、社会に対して大きな影響力を持つ人物のことを指します。

ネット上では、SNSなどを通じて他の消費者の購買行動に大きな影響力を持つキーパーソンのことを指します。

参考:インフルエンサー【Influencer】の用語説明|ferret

あれっ?

ずっと「SNSの人気者」ぐらいに思っていました。



この場合、「社会思想への影響力」が重要なんでしょうか?

それとも「購買行動への影響力」が重要なんでしょうか?

よくわかりません。

皆さんにとって「インフルエンサー」はどんなイメージ、どんな定義ですか?

定義はさておき、現に「影響力のある人」はいます。

いわば現代の「代表的日本人」ですね。



もっとも、SNSの特徴はそれぞれの見えているタイムラインが違うことです。

テレビと違ってみんなで一緒に見ているものではありません。

ですので「インフルエンサー」と一言で言っても、その中身は人それぞれに違っています。

「歴史上の人物」だけでなく、「同じ空気を吸っている人」の「今」をつぶさに知ることができ、そこから影響を受けられるというのは、とても面白い時代ですよね。

そんな出会いに感謝しつつ。

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