「アヴェ・マリア」は聖母マリアが天使から受胎告知をされたときの挨拶の言葉で、「こんにちは、マリア」や「おめでとう、マリア」を意味します。
モーツァルトは32歳のときに、この気高く清らかな4声のカノン(K.554)を作りました。
モーツァルトの「アヴェ・マリア」の魅力とカノン
シンプルながら、後半に現れる高いファの音から半音で下降する動きなど、優美で繊細な響きがあります。この曲は一緒に歌う方が、その魅力に近づけるのかもしれません。
編曲してみると、カノンとフーガには大きな違いがあることに気づかされました。
フーガは繰り返し出てくる旋律を強調することで絡み合いの面白さを感じられるのに対して、カノンは旋律の重なりや移り変わりを意識しないと単調に聞こえてしまうのです。
曲の構造は模倣形式ですが、アプローチが真逆なんですね。
「ベルンリート・カノン」の逸話と成立時期
このカノンは「ベルンリート・カノン」とも呼ばれ、ミュンヘンに訪れた時に、シュタルンベルク湖にあるベルンリート修道院に立ち寄り、そこの記念帳に書いたというエピソードが伝えられていています。
作曲された1788年には、6月に生後6か月の長女テレジアをなくしています。その後8月に彼の最後の交響曲である第41番(K.551)の完成させ、9月がこのカノンが作品に加わりました。
カノン 「アヴェ・マリア」の実際の作曲時期は、9月よりは少しさかのぼると考えられています。どんな思いで作曲したんでしょう。
彼自身にも地上に残された時間はあとわずかしかありませんでした。
作曲:W.A.Mozart