縛りについて
まず、「ファミコン音源」といっても、いろいろあって、もっとも厳密にはファミコン実機に演奏させる方法です。
自分の場合は、もっとゆるくて、ファミコン風の「矩形波」「三角波」「ノイズ」を音源としていれば、いいかな、と思っています。
ファミコン音源にはいくつか縛りがあります。
代表的なものは同時発音数で、矩形波は2つ、三角波は1つ、ノイズも1つ、これで音楽・効果音を演奏しています。
ドラクエ3などは、矩形波2・三角波1をフルに使っているので、効果音が入るとそこだけ一部メロディが欠けたりしてますね。
自分としては、はじめはこの縛りに従っていたんですが、3声だとメロディとベース音が同じ音程の場合に和音が作りにくいことや、7以上の和音を分散和音でしか表現できないことで、普通のクラシック曲の編曲でも苦労しました。
けっきょく、ファミコンを再現するのが目的でもないので、ルールを無視することにしました。
魅力について
1つ目は懐かしい
自分にとってのファミコン音源の魅力は、まずは子どものときに聴いた懐かしい音、ということです。
自分はドラクエ3が世代なんですが、当時はわざわざテープに録音してドライブ中にも聴かせてもらったりしていました。
いわば「家庭の味」みたいなもの。
2つ目は聞きやすさ。
わりと平板な電子音楽なんですが、癖がなくて、長時間でも聞きやすいと思います。
矩形波は明瞭でメロディを追いやすいし、三角波は優しい中にも主張があって、バランスが絶妙なんですよね。
ダイナミクスの変化もあまり大きくないので、感情に訴えられて疲れる、ということが少ないと思います。
3つ目はシンプルさ。
ファミコン時代は期間が長いのですが、初期は特にゲーム音楽がシンプルでした。
単旋律で4小節ぐらいのループでも、音楽として成立していたんですよね。
もちろん、ファミコン後期に進むにつれて、制約の中でいかに表現するか、という技術が進歩していきますが、それはそれ。
自分で作曲してもあまり作り込まずに「ま、いっか」と思って出せるんです。
4つ目はジャンルに汎用。
クラシックからロック、歌曲まで、いろいろなジャンルを演奏できる楽器はあまりありません。
代表的なものは、ピアノ・オルゴールぐらいではないでしょうか。
弦楽四重奏もありなのかもしれませんが、やっぱりクラシック寄りになりますよね。
ファミコン音源は、ピアノ風にも、オーケストラ風にも、バンド風にもなります。
それが面白さなんですよね。
プレイリストで聴くときに、いきなりクラシックの次に、ロックが来ても、違和感ない(少しはあるけど)のはファミコンぐらいではないでしょうか。
自分は音楽ジャンルで雑食なので、これはすごくありがたい性質です。
5つ目は一人でできる。
通常、パートが絡み合うような曲を演奏するためには、人の手を借りるか多重録音する必要があります。
実験的にいろいろするには、電子鍵盤で作れるファミコン音源が気楽です。
なかなか集まって演奏とか、できないんですよね。
6つ目は、作り込まなくてもとりあえず完成
ファミコン音源は「完成」になるんです。
midiなどは、どうしても「コピー」「レプリカ」な感じがありませんか?
とはいえ、最近のDTMの楽曲は「音楽」として聴こえます。
でも、それにはすごい作り込みがあるんですよね。
演奏家の無意識レベルで作り込んでいる音楽を、データとして再現するのは大変です。
自分は音作りと曲作りは分けていて、音作りは生の楽器演奏の方が感覚的でいいかな、と。
そういう意味で、ファミコン音源なら、あるていど粗くても「曲が作れる」。
だって、昔はROMのデータ量が少なかったので、あまり音楽にデータを避けなかったわけですし。
ドット絵もそうですが、当時のゲームってプレイヤーの「想像」で補うんですよね。
ゲーム音楽もそうで、チープな音の列を聴いて、自分の心の中でオーケストラを鳴らしたり、バンドを鳴らしたりするんですよね。
初期のファミコンゲームは、小さなチームで開発できるものでした。
その音楽は個人でも、ある程度 形にできるかな、と。
そういう意味で敷居が低いと思います。
実際に、いろいろな方の作品を聴くと、すごくレベルが高いのですが、それはどんな楽器だって一緒。
素人がピアノを楽しむように、私はファミコン音源を楽しんでいます。